数学
\[ \require{physics} \]
この記事では、一階常微分方程式から線形偏微分方程式、Fourier解析、複素解析へ進む。各節では、問題を先に解き、必要なら理論を開き、最後に解答を確認する。
一階常微分方程式
問題1 同次形微分方程式
次の微分方程式の一般解を求めよ。
\[ x\dv{y}{x}=x+y, \qquad (x+y)\dv{y}{x}=2x-y. \]
\(\dv{y}{x}=f(y/x)\) の形では \(v=y/x\)、すなわち \(y=xv\) と置く。すると
\[ \dv{y}{x}=v+x\dv{v}{x} \]
となり、\(v\) と \(x\) の変数分離形へ変換できる。第1式のように先に線形方程式として見える場合は、積分因子を使ってもよい。
第1式は
\[ \dv{y}{x}-\frac1xy=1 \]
であり、積分因子は \(1/x\) である。したがって
\[ \dv{x}\left(\frac{y}{x}\right)=\frac1x, \qquad \boxed{y=x\left(\ln\abs{x}+C\right)}. \]
第2式で \(v=y/x\) と置くと
\[ v+x\dv{v}{x}=\frac{2-v}{1+v}, \qquad \frac{1+v}{2-2v-v^2}\dd v=\frac{\dd x}{x}. \]
積分・整理して
\[ \boxed{y^2+2xy-2x^2=C} \]
を得る。
問題2 一階線形方程式とBernoulli方程式
- 一階線形方程式 \(y'+P(x)y=Q(x)\) の一般解を導け。
- \(y'+5y=6e^x\) を解け。
- Bernoulli方程式 \(y'+P(x)y=Q(x)y^n\) を線形方程式へ変換せよ。
一階線形方程式では、積分因子
\[ \mu(x)=\exp\left(\int P(x)\dd x\right) \]
を掛けると、左辺が \((\mu y)'\) になる。Bernoulli方程式は \(z=y^{1-n}\) と置くことで、\(z\) の一階線形方程式になる。\(y=0\) を割り算で失う場合がある点に注意する。
\[ \boxed{ y=e^{-\int P\dd x} \left[ \int Qe^{\int P\dd x}\dd x+C \right]}. \]
積分因子 \(e^{5x}\) を掛けると
\[ (e^{5x}y)'=6e^{6x}, \]
したがって
\[ \boxed{y=e^x+Ce^{-5x}}. \]
\(z=y^{1-n}\) と置けば
\[ z'=(1-n)y^{-n}y' \]
なので、
\[ \boxed{z'+(1-n)P(x)z=(1-n)Q(x)} \]
となる。
問題3 Riccati方程式
\[ x^2\dv{y}{x}=x^2y^2-xy-1 \]
を解け。
Riccati方程式は特殊解が一つ分かれば一階線形方程式へ落とせる。この問題では各項の \(x\) の次数から \(y=u/x\) と置くと、最短で変数分離形になる。
\(y=u/x\) と置くと
\[ \frac1x\dv{u}{x}=\frac{u^2-1}{x^2}. \]
よって
\[ \int\frac{\dd u}{u^2-1}=\int\frac{\dd x}{x}, \qquad \frac{u-1}{u+1}=Cx^2. \]
したがって
\[ \boxed{ y=\frac1x\frac{1+Cx^2}{1-Cx^2} }. \]
変数分離で除外した \(u=-1\) も解なので、特別解 \(y=-1/x\) を併記する。
定数係数線形常微分方程式
問題4 二階斉次方程式
次の方程式を解け。
\[ \begin{aligned} y''+4y'-5y&=0,\\ y''-6y'+9y&=0,\\ y''+2y'+5y&=0. \end{aligned} \]
\(y=e^{\lambda x}\) を仮定して特性方程式を作る。異なる実根なら二つの指数関数、重根なら \(xe^{\lambda x}\) を追加し、複素根 \(\alpha\pm i\beta\) なら \(e^{\alpha x}\cos\beta x\) と \(e^{\alpha x}\sin\beta x\) を基底にする。
順に、
\[ \boxed{y=C_1e^x+C_2e^{-5x}}, \]
\[ \boxed{y=(C_1+C_2x)e^{3x}}, \]
\[ \boxed{y=e^{-x}(C_1\cos2x+C_2\sin2x)}. \]
問題5 二階非斉次方程式
次の方程式を解け。
\[ \begin{aligned} y''+2y'-3y&=e^{2x},\\ y''-3y'+2y&=20\sin2x,\\ y''+4y'-5y&=6x,\\ y''+4y'+4y&=4e^{2x}. \end{aligned} \]
線形方程式 \(L[y]=R(x)\) では
\[ y=y_h+y_p \]
と分ける。未定係数法では \(R(x)\) と同形の試行関数を仮定する。ただし試行関数が斉次解と重なる場合は \(x\) を掛けて独立にする。
特性方程式と未定係数法から、順に
\[ \boxed{y=C_1e^x+C_2e^{-3x}+\frac15e^{2x}}, \]
\[ \boxed{y=C_1e^x+C_2e^{2x}-\sin2x+3\cos2x}, \]
\[ \boxed{y=C_1e^x+C_2e^{-5x}-\frac65x-\frac{24}{25}}, \]
\[ \boxed{y=(C_1+C_2x)e^{-2x}+\frac14e^{2x}}. \]
Euler型方程式と高階方程式
問題6 Euler–Cauchy方程式
次の方程式を解け。
\[ \begin{aligned} x^2y''-xy'+y&=x^2,\\ x^2y''-8xy'-8y&=x^2,\\ y''+\frac1xy'+\frac4{x^2}y&=\left(\frac{2\ln x}{x}\right)^2 \quad(x>0). \end{aligned} \]
\(t=\ln x\)、\(D=\dv{}{t}\) とすると
\[ x\dv{}{x}=D,\qquad x^2\dv[2]{}{x}=D(D-1). \]
したがってEuler–Cauchy方程式は \(t\) に関する定数係数方程式へ変換できる。右辺も \(x=e^t\) で書き換える。
第1式は
\[ (D-1)^2y=e^{2t} \]
となるので、
\[ \boxed{y=C_1x+C_2x\ln x+x^2}. \]
第2式は
\[ (D^2-9D-8)y=e^{2t}. \]
特性根は \(r=(9\pm\sqrt{113})/2\) であり、
\[ \boxed{ y=C_1x^{(9+\sqrt{113})/2} +C_2x^{(9-\sqrt{113})/2} -\frac1{22}x^2 }. \]
第3式に \(t=\ln x\) を使うと
\[ \dv[2]{y}{t}+4y=4t^2. \]
したがって
\[ \boxed{ y=C_1\cos(2\ln x)+C_2\sin(2\ln x) +(\ln x)^2-\frac12 }. \]
問題7 四階線形方程式
\[ y^{(4)}-2y^{(3)}+2y'-y=9e^{-2x} \]
を解け。
定数係数線形方程式では、階数が上がっても \(y=e^{rx}\) を代入し、特性多項式の根と重複度から斉次解を作る。右辺の指数関数には演算子多項式へ指数を代入すると特殊解の係数を素早く求められる。
特性多項式は
\[ r^4-2r^3+2r-1=(r-1)^3(r+1). \]
また \(p(-2)=27\) なので特殊解は \((1/3)e^{-2x}\) である。よって
\[ \boxed{ y=(C_1+C_2x+C_3x^2)e^x+C_4e^{-x} +\frac13e^{-2x} }. \]
線形偏微分方程式
問題8 一階偏微分方程式
次の初期値問題を解け。
\[ \pdv{u}{x}=4\pdv{u}{y}, \qquad u(0,y)=8e^{-3y}, \]
\[ \pdv{u}{x}=2\pdv{u}{y}+u, \qquad u(x,0)=3e^{-5x}+2e^{-3x}. \]
\(a u_x+b u_y=cu\) では
\[ \dv{x}{s}=a,\qquad \dv{y}{s}=b,\qquad \dv{u}{s}=cu \]
を同時に解く。\(c=0\) なら、\(u\) は特性曲線上で一定である。
第1式は特性量 \(y+4x\) に沿って一定なので
\[ u=F(y+4x). \]
初期条件から
\[ \boxed{u=8e^{-12x-3y}}. \]
第2式では特性量は \(y+2x\)、特性上で \(u'=u\) なので
\[ u=e^xF(y+2x). \]
初期条件を代入し、
\[ \boxed{u=3e^{-5x-3y}+2e^{-3x-2y}}. \]
問題9 熱方程式と波動方程式
\[ \pdv{u}{t}=2\pdv[2]{u}{x}, \quad u(0,t)=u(3,t)=0, \quad u(x,0)=5\sin4\pi x-3\sin8\pi x \]
を解け。
\[ \pdv[2]{y}{t}=16\pdv[2]{y}{x}, \quad y(0,t)=y(2,t)=0, \]
\[ y(x,0)=6\sin\pi x-3\sin4\pi x, \qquad \pdv{y}{t}(x,0)=0 \]
を解け。
両端固定・零境界条件では空間固有関数は
\[ \sin\left(\frac{n\pi x}{L}\right) \]
となる。熱方程式では各モードが指数減衰し、波動方程式では時間方向に正弦・余弦振動する。初期条件を固有関数へ展開して係数を決める。
与えられた初期形はすでに固有関数の和なので、
\[ \boxed{ u=5e^{-32\pi^2t}\sin4\pi x -3e^{-128\pi^2t}\sin8\pi x }. \]
波速は \(c=4\)、初速度は0なので、
\[ \boxed{ y=6\sin\pi x\cos4\pi t -3\sin4\pi x\cos16\pi t }. \]
Fourier級数と変換
問題10 Fourier級数
\(f(x)=x^2\)(\(-1<x<1\))を周期2のFourier級数へ展開せよ。
\(f(x)=x(x-1)\)(\(0<x<1\))の半区間余弦級数と半区間正弦級数を求めよ。
熱方程式
\[ u_t=\alpha u_{xx}, \quad 0<x<L, \quad u(0,t)=u(L,t)=0, \quad u(x,0)=f(x) \]
の解をFourier係数で表せ。
\((-L,L)\) のFourier級数は
\[ f(x)=\frac{a_0}{2} +\sum_{n=1}^{\infty} \left( a_n\cos\frac{n\pi x}{L} +b_n\sin\frac{n\pi x}{L} \right). \]
\((0,L)\) の余弦級数は偶拡張、正弦級数は奇拡張に対応する。係数の前の \(1/L\) と \(2/L\) を混同しない。
偶関数なので \(b_n=0\) であり、
\[ \boxed{ x^2=\frac13 +\sum_{n=1}^{\infty} \frac{4(-1)^n}{n^2\pi^2}\cos n\pi x }. \]
余弦級数は
\[ \boxed{ x(x-1)=-\frac16 +\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2[(-1)^n+1]}{n^2\pi^2}\cos n\pi x }. \]
正弦級数は
\[ \boxed{ x(x-1)= -\sum_{n=1}^{\infty} \frac{4[1-(-1)^n]}{n^3\pi^3}\sin n\pi x }. \]
\[ \boxed{ u(x,t)=\sum_{n=1}^{\infty} b_n \exp\left[-\alpha\left(\frac{n\pi}{L}\right)^2t\right] \sin\frac{n\pi x}{L} }, \]
\[ b_n=\frac2L\int_0^Lf(x)\sin\frac{n\pi x}{L}\dd x. \]
問題11 Fourier正弦変換の逆変換
\[ \int_0^\infty f(x)\sin(kx)\dd x=ke^{-k} \]
が与えられている。\(f(x)\) を求めよ。
正弦変換を
\[ F_s(k)=\int_0^\infty f(x)\sin(kx)\dd x \]
と定義すれば、逆変換は
\[ f(x)=\frac2\pi\int_0^\infty F_s(k)\sin(kx)\dd k \]
である。
\[ \int_0^\infty ke^{-k}e^{ikx}\dd k =\frac1{(1-ix)^2}. \]
虚部を取ると
\[ \int_0^\infty ke^{-k}\sin(kx)\dd k =\frac{2x}{(1+x^2)^2}. \]
したがって
\[ \boxed{ f(x)=\frac{4x}{\pi(1+x^2)^2} }. \]
ベクトル解析・複素解析・線形代数
問題12 球面の法線と表面積
単位球面を
\[ \boldsymbol r(u,v) =(\cos u\cos v,\ \cos u\sin v,\ \sin u), \]
\[ -\frac\pi2\le u\le\frac\pi2, \qquad 0\le v<2\pi \]
で表す。外向き単位法線と表面積を求めよ。
\(\boldsymbol r_u\) と \(\boldsymbol r_v\) は曲面の接ベクトルであり、その外積は法線方向を向く。大きさ
\[ \abs{\boldsymbol r_u\times\boldsymbol r_v} \]
が面積要素の倍率となる。外積の順序で向きが反転するので、外向きか確認する。
計算すると
\[ \boldsymbol r_u\times\boldsymbol r_v =-\cos u\,\boldsymbol r. \]
この範囲では \(\cos u\ge0\) なので、外向き単位法線は
\[ \boxed{\boldsymbol n=\boldsymbol r}. \]
面積は
\[ A=\int_0^{2\pi}\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\cos u\,\dd u\dd v =\boxed{4\pi}. \]
問題13 留数を使う積分
\[ \int_0^{2\pi}\frac{\dd\theta}{5+4\cos\theta} \]
を求めよ。
\[ \oint_C\frac{\dd z}{(z-1)z(z+2)} \]
を、\(C\) の内部にある極を用いて表せ。
留数定理は
\[ \oint_Cf(z)\dd z=2\pi i \sum_{\text{inside }C}\operatorname{Res}(f;z_k) \]
である。積分路がどの極を囲むか分からなければ数値は一意に決まらない。三角関数積分は \(z=e^{i\theta}\) と置けば単位円上の留数計算へ変換できる。
標準積分または留数計算から
\[ \boxed{ \int_0^{2\pi}\frac{\dd\theta}{5+4\cos\theta} =\frac{2\pi}{\sqrt{5^2-4^2}} =\frac{2\pi}{3} }. \]
各留数は
\[ \operatorname{Res}(f;1)=\frac13,\qquad \operatorname{Res}(f;0)=-\frac12,\qquad \operatorname{Res}(f;-2)=\frac16. \]
したがって
\[ \boxed{ \oint_Cf(z)\dd z =2\pi i\sum_{z_k\in\operatorname{int}C} \operatorname{Res}(f;z_k) }. \]
3極すべてを囲むなら留数和は0で、積分も0である。
問題14 Jordan標準形
次の行列のJordan標準形を求めよ。
\[ A_1= \begin{pmatrix} 2&1&1\\ 1&3&2\\ 0&-1&1 \end{pmatrix}, \qquad A_2= \begin{pmatrix} 1&3&1\\ 1&-1&-1\\ -1&3&3 \end{pmatrix}. \]
固有値の代数的重複度だけではJordan blockの大きさは決まらない。\(\dim\ker(A-\lambda I)\) がJordan blockの個数を与え、\(\ker(A-\lambda I)^k\) の増え方が各blockの長さを決める。
\(A_1\) の特性多項式は \((\lambda-2)^3\) で、固有空間は1次元である。したがって
\[ \boxed{ J_1= \begin{pmatrix} 2&1&0\\ 0&2&1\\ 0&0&2 \end{pmatrix} }. \]
\(A_2\) の特性多項式は \((\lambda-2)^2(\lambda+1)\) で、\(\lambda=2\) の固有空間は2次元である。よって対角化でき、
\[ \boxed{ J_2=\operatorname{diag}(-1,2,2) }. \]