材料反応工学

University
2024
Author

Serika Yuzuki

Published

April 5, 2024

\[ \require{physics} \require{mhchem} \]

ノート

後半は豊島先生が担当するらしい。

速度論概要

平衡状態 (Equilibrium State)

平衡状態とは熱力学的に安定な状態、つまり自由エネルギーが最も低い状態のことを指す。これについての話は平衡論と呼ばれており、熱力学で中心的に扱われる。

定常状態 (Steady State)

定常状態とは、系内の物質量やエネルギーが時間とともに変化しない状態のことを指す。これは系内の物質量やエネルギーの収支が釣り合っている状態であり、系内の物質量やエネルギーの変化がないことを意味する。この講義では平衡状態、定常状態は独立して考えるらしい。

数式的に書けば、

(系への蓄積速度) = (系への流入速度) - (系からの流出速度) + (系内での生成速度) - (系内での消失速度)=0

\[ \pdv{C}{t}(x,t) = 0 \]

速度過程

初期状態から平衡状態に至るまでの過程を速度過程と呼ぶ。講義ではここの部分を重点的にやる予定らしい。

化学反応速度論

化学反応速度

化学反応速度とは、単位時間あたりに反応物質が反応する速さのことを指す。これは反応物質の濃度に依存するため、一般的には濃度の関数として表される。

\[ -r_A = - \dv{C_A}{t} = f(C_A, C_B, \cdots) \]

ここで考える反応装置とは回分反応器(バッチ式)で、これの特徴は、閉じた系であること、反応物質の濃度が空間的に均一であること、反応物質の濃度が時間的に変化することである。

他にも、槽型反応器CSTR、管型流通式反応機などがある。CSTRは特に大量生産に向いているので、工業的によく使われる。

cstr

ある均一反応を考えると、その反応速度は以下のように表される。

\[ \ce{aA + bB -> cC + dD} \]

Aの消失速度は

\[ -r_A = \frac{1}{V} \dv{N_A}{t} \; \left[\frac{\text{mol}}{\text{m}^3 \cdot \text{s}}\right] \]

また、次のような等式も当然成り立つ。

\[ \frac{r_A}{a}= \frac{r_B}{b} = \frac{r_C}{c} = \frac{r_D}{d} \]

反応の種類

  • 単一反応

\[ \ce{A -> B} \]

\[ \ce{A + B -> C + D} \]

  • 複合反応

\[ \ce{A -> B -> C} \]

  • 並行反応

\[ \ce{A -> C} \]

\[ \ce{A -> D} \]

  • 素反応

\[ \ce{A + B -> C} \]

分解できる最小単位を素反応と呼ぶ。

  • 非素反応

\[ \ce{H2 + Br2 -> 2HBr} \]

\[ r_{\ce{HBr}} = \frac{k_1[\ce{H2}][\ce{Br2}]^{\frac{1}{2}}}{k_2 + \frac{[\ce{HBr}]}{[\ce{Br2}]}} \]

反応速度式

\[ -r_A=kC_A^aC_B^b \cdots \]

ここで、\(k\) は反応速度定数である。また、\(a,b,\cdots\) は反応次数である。全体の反応次数は \(a+b+\cdots\) である。また、反応次数は整数とは限らなし、 \(0\) であることもある。

例として幾つかあげる。

  1. \[ \ce{H2+I2 -> 2HI} \]

\[ r = k[\ce{H2}][\ce{I2}] \]

  1. \[ \ce{CH3CHO -> CH4 + CO} \]

\[ r = k[\ce{CH3CHO}]^{3/2} \]

  1. \[ \ce{H2 + Br2 -> 2HBr} \]

\[ r_{\ce{HBr}} = \frac{k_1[\ce{H2}][\ce{Br2}]^{\frac{1}{2}}}{k_2 + \frac{[\ce{HBr}]}{[\ce{Br2}]}} \]

以上のように、実験的に決定することとなる。

このような手順を繰り返してある一定の反応速度式を求めては繰り返す作業で、反応機構を求めることを反応機構解析と呼ぶ。

定常状態近似

  • 正味の変化速度は各々の素反応での反応速度の総和で表される。
  • 反応中間体の変化量は \(0\) である。

このような近似を定常状態近似と呼ぶ。このような近似を用いて解析した結果を一つ例として出すと、

\[ \ce{H2 + Br2 -> 2HBr} \]

この反応の速度式は実験的に次のようになっている。

\[ r_{\ce{HBr}} = \frac{k_1[\ce{H2}][\ce{Br2}]^{\frac{1}{2}}}{k_2 + \frac{[\ce{HBr}]}{[\ce{Br2}]}} \]

この反応の素反応は次のようになっている。

  1. \(\ce{Br2 -> 2Br^{\ast}}\)
  2. \(\ce{H2 + Br^{\ast} -> HBr + H^{\ast}}\)
  3. \(\ce{H^{\ast} + Br2 -> HBr + Br^{\ast}}\)
  4. \(\ce{H^{\ast} + HBr -> H2 + Br^{\ast}}\)
  5. \(\ce{Br^{\ast} + Br^{\ast} -> Br2}\)

なので、

\[ \dv{[\ce{HBr}]}{t} = k_2[\ce{Br^{\ast}}][\ce{H2}] + k_3[\ce{H^{\ast}}][\ce{Br2}] - k_4[\ce{H^{\ast}}][\ce{HBr}] \]

\[ \dv{[\ce{Br^{\ast}}]}{t} = k_1[\ce{Br2}] - k_2[\ce{Br^{\ast}}][\ce{H2}] + k_3[\ce{H^{\ast}}][\ce{Br2}] + k_4[\ce{H^{\ast}}][\ce{HBr}] - k_5[\ce{Br^{\ast}}]^2 =0 \]

\[ \dv{[\ce{H^{\ast}}]}{t} = k_2[\ce{Br^{\ast}}][\ce{H2}] - k_3[\ce{H^{\ast}}][\ce{Br2}] - k_4[\ce{H^{\ast}}][\ce{HBr}] = 0 \]

この式をこねくり回すことによって、反応速度式を求めることができる。その内容は下二つの式の中間体濃度を消去することで求めることができる。

次に反応機構の推察をしてみる。これは試験で出すらしい。

\[ \ce{2A + B -> A2B} \]

これの反応速度式が

\[ r = \frac{0.72[\ce{A}]^2[\ce{B}]}{1+2[\ce{A}]} \]

とする。

この反応の素反応を、

\[ \ce{A + A + B <=> A2^{\ast} + B <=> A2B} \]

と考えて、反応速度式を求めると、おかしくなる。どうおかしくなるかは面倒なので具体的には書かない。めんどくさい

\[ \ce{A + A + B <=> AB + A <=>A2B} \]

にするとうまいこといく。

Linndemann-Hinshelwood機構

気相中での化学分解や異性化反応をモデル化で使われる。

\[\ce{A -> P}\]

この一見一時反応見えるものが実は中間体の存在する反応だという反応機構だ。

\[\ce{A + M <=> A^{*} + M}\]

\[\ce{A^{*} -> P}\]

ここで、 \(\ce{M}\) は触媒や溶媒のことを指す。 \(\ce{A^{*}}\) は中間体である。

この反応の速度式は次のように表される。

\[ k_1[\ce{A}][\ce{M}] = k_{-1}[\ce{A^*}][\ce{M}] + k_2[\ce{A^*}] \]

\[ \Rightarrow \quad [\ce{A^*}] = \dfrac{k_1[\ce{A}][\ce{M}]}{k_{-1}[\ce{M}] + k_2} \]

で、全体の反応速度は \(k_2 [\ce{A^*}]\) で表されるので、

\[ \dv{[\ce{P}]}{t} = k_2 [\ce{A^*}] = \frac{k_1k_2[\ce{A}][\ce{M}]}{k_{-1}[\ce{M}] + k_2} \]

この式で、\(k_{-1}[\ce{M}] \gtreqless k_2\) によって一次反応なのか二次反応なのかが決まる。

また、見なしの反応速度定数を \(k\) とかにしたら、

\[ \begin{aligned} k[\ce{A}] &= \frac{k_1k_2[\ce{A}][\ce{M}]}{k_{-1}[\ce{M}] + k_2} \\ \dfrac{1}{k} &= \dfrac{k_{-1}}{k_1k_2} + \dfrac{1}{k_2[\ce{M}]} \end{aligned} \]

ここで、

\[ \begin{aligned} p&=\dfrac{n}{V}RT=[\ce{M}]RT \\ \dfrac{1}{[\ce{M}]} &\propto \dfrac{1}{p} \end{aligned} \]

ということから考えれば、

\[ \dfrac{1}{k} \propto \dfrac{1}{p} \]

このように、反応速度定数は圧力に依存することがわかる。

酵素反応

酵素で反応が活性化される反応物を基質と呼ぶ。

\[ \ce{S ->[\symup{enzyme}] P} \]

反応速度は酵素濃度に比例し、また、基質濃度が高い時は、反応速度は基質濃度によらず一定である。

反応速度式は次のような素反応で考えられるする。

\[ \ce{E + S <=>[k_1][k_2] ES ->[k_3] E + P} \]

$ $ は酵素基質複合体と呼ばれる。

\[ \begin{aligned} \dv{[\ce{ES}]}{t} &= k_1[\ce{E}][\ce{S}] - k_2[\ce{ES}] - k_3[\ce{ES}] = 0\\ \ce{E_0} &= [\ce{E}] + [\ce{ES}] \\ \end{aligned} \]

ここで、 $ $ を求めれば、酵素が優れているかどうかがわかる。ただし、 \(\ce{E}\) は邪魔なので消してやると、

\[ [\ce{ES}] = \frac{[\ce{E_0}][\ce{S}]}{\frac{k_2+k_3}{k_1} + [\ce{S}]} = \frac{[\ce{E_0}][\ce{S}]}{k_m + [\ce{S}]} \]

となる。ここで、 \(k_m = \frac{k_2+k_3}{k_1}\) とする。この式はミカエリス・メンテンの式と呼ばれ、 \(k_m\) はミカエリス定数と呼ばれる。優れている酵素ほど \(k_m\) が小さい。

次に最大反応速度は

\[ V_{\max} = k_3[\ce{E_0}] \]

なのは明らかである。そのように置いておくと、

\[ \dv{[\ce{P}]}{t} = k_3[\ce{ES}] = \frac{V_{\max}[\ce{S}]}{k_m + [\ce{S}] } \]

この時、 \(k_m\) は反応速度の最大値の半分となる \([\ce{S}]\) の値と同じなのは \(k_m = [\ce{S}]\) 代入したらすぐわかる。なのでそこを基準点として考えて、

  1. \([\ce{S}] \ll k_m\) の時、 \(\dv{[\ce{P}]}{t} = \frac{V_{\max}}{k_m}[\ce{S}]\) となる。
  2. \([\ce{S}] \gg k_m\) の時、 \(\dv{[\ce{P}]}{t} = V_{\max}\) となる。

また、 \(V_{\max}\) の中身を考えれば、 \(\dv{[\ce{P}]}{t}\) は常に \([\ce{E_0}]\) に比例することがわかる。

次に、 \(k_m\) の実験的な求め方だが、式を分母分子逆転させて考える。それで直線プロットする。

重合反応

\[ \begin {aligned} \ce{I &->[k_d] 2R^{.}}\\ \ce{R^{.} + M &->[k_i] M^{.}}\\ \ce{M^{.} + M &->[k_p] M^{.}}\\ \ce{2M^{.} &->[k_t] P}\\ \ce{M^{.} + S &->[k_{tr}] P + S^{.}} \end{aligned} \]

重要なのは、 \(\ce{M}\) はモノマーではあるが、2式以降の \(\ce{M^{.}}\) はラジカルで、ただのモノマーじゃない。

ポリマーの生成速度はモノマーの減少速度に等しい。

\[ R_p = \dv{[\ce{P}]}{t} = k_p[\ce{M^{.}}][\ce{M}] \]

それからラジカルは定常状態にあると仮定するので、

\[ \begin{aligned} \dv{[\ce{M^{.}}]}{t} &= k_i[\ce{R^{.}}][\ce{M}] - k_t[\ce{M^{.}}]^2 = 0\\ \dv{[\ce{R}]}{t} &= 2fk_d[\ce{I}] - k_i[\ce{R^{.}}][\ce{M}] = 0 \end{aligned} \]

これを解くと、

\[ R_p = \sqrt{\frac{2fk_d}{k_t}}k_p[\ce{I}]^{1/2}[\ce{M}] \]

動力学的鎖長は

\[ \nu = \frac{\text{単位時間に消えたモノマー分子}}{\text{単位時間に生成されたポリマー分子}}=\frac{R_p}{R_{tr}+R_t} \]

これを計算すると、

\[ \begin{aligned} \frac{1}{\nu} &= \frac{R_t}{R_p} + \frac{R_{tr}}{R_p} \\ &= \frac{k_t[\ce{M^{.}}]}{k_p[\ce{M^{.}}][\ce{M}]} + \frac{k_{tr}[\ce{M^{.}}][\ce{S}]}{k_p[\ce{M^{.}}][\ce{M}]} \\ &= \frac{k_t}{k_p} + \frac{k_{tr}[\ce{S}]}{k_p[\ce{M}]} \\ &= \frac{1}{\nu_0} + C_{tr}\frac{[\ce{S}]}{[\ce{M}]} \end{aligned} \]

ここで \(\nu_0\) は溶媒がない時の動力学的鎖長で、 \(C_{tr}\)\(k_{tr}/k_p\) で連載同定数と呼ばれる。

反応速度と温度

反応速度定数は温度に依存する。これはアレニウスの式で表される。

\[ k = A\exp\left(-\frac{E_a}{RT}\right) \]

ここで、 \(A\) は頻度因子、 \(E_a\) は活性化エネルギー、 \(R\) は気体定数、 \(T\) は温度である。

この式を対数変換すると、

\[ \ln k = \ln A - \frac{E_a}{RT} \]

これの直線プロットをアレニウスプロットよ呼ぶ。

積分法

反応速度係数を求める方法の一つに積分法がある。

\[ \begin{aligned} r= - \dv{C_A}{t} &= kf(C_A) \\ -\dv{C_A}{f(C_A)} &= kdt \\ \int_{C_{A0}}^{C_A} \frac{dC_A}{f(C_A)} &= -kt \end{aligned} \]

具体的には、

  • 一次反応

\[ \begin{aligned} \int_{C_{A0}}^{C_A} \frac{dC_A}{C_A} &= -kt\\ \ln \frac{C_A}{C_{A0}} &= -kt \end{aligned} \]

反応率

\[ X=\frac{C_{A0}-C_A}{C_{A0}} \]

を使って表すと

\[ \ln(1-X) = kt \]

となる。ここで半減期がわかったとすると、

\[ k = \frac{\ln 2}{t_{1/2}} \]

と、反応速度定数がわかる。

  • 二次反応

同様にして積分すればいい。

\[ \begin{aligned} \int_{C_{A0}}^{C_A} \frac{dC_A}{C_A^2} &= -kt\\ - \frac{1}{C_A} + \frac{1}{C_{A0}} &= -kt\\ \frac{1}{C_A} &= \frac{1}{C_{A0}} + kt \end{aligned} \]

で、半減期は

\[ t_{1/2} = \frac{1}{kC_{A0}} \]

になって、初期濃度に依存するようになる。

  • n次反応

\[ \begin{aligned} \int_{C_{A0}}^{C_A} \frac{dC_A}{C_A^n} &= -kt\\ \frac{1}{(n-1)C_A^{n-1}} - \frac{1}{(n-1)C_{A0}^{n-1}} &= kt\\ \frac{1}{C_A^{n-1}} &= \frac{1}{C_{A0}^{n-1}} + (n-1)kt \end{aligned} \]

  • 0次反応

\[ \begin{aligned} \int_{C_{A0}}^{C_A} dC_A &= -kt\\ C_A - C_{A0} &= -kt\\ C_A &= C_{A0} - kt \end{aligned} \]

  • 異種2分子反応

\[ \ce{A + B -> X} \]

\[ \begin{aligned} \dv{[\ce{A_0}] - [\ce{X}]}{t} &= -k([\ce{A_0}] - [\ce{X}])([\ce{B_0}] - [\ce{X}]) \\ \dfrac{\dd{} [\ce{X}]}{([\ce{A_0}] - [\ce{X}])([\ce{B_0}] - [\ce{X}])} &= kdt \\ \ln \frac{[\ce{A_0}] - [\ce{X}]}{[\ce{B_0}] - [\ce{X}]} &= kt \end{aligned} \]

後半戦 (昔のやつ)

不均一反応

不均一反応の速度表示には次のようなものがある

記号 定義 単位 意味
\(r_i\) \(-\dfrac{1}{V}\dfrac{d}{dt}n_i\) \(\mathrm{mol \cdot m^{-3} \cdot s^{-1}}\) 単位時間あたりの体積反応量
\(r_i'\) \(-\dfrac{1}{W}\dfrac{d}{dt}n_i\) \(\mathrm{mol \cdot kg^{-1} \cdot s^{-1}}\) 単位時間あたりの質量反応量
\(r_i''\) \(-\dfrac{1}{S}\dfrac{d}{dt}n_i\) \(\mathrm{mol \cdot m^{-2} \cdot s^{-1}}\) 単位時間あたりの表面反応量

これらはすべて互換可能である。

\[ r_i = \dfrac{W}{V}r_i' = \dfrac{S}{V}r_i'' \]

ここで、 \(W\) は質量、 \(S\) は表面積、 \(V\) は体積である。

固液界面における反応

Show Code
import matplotlib.pyplot as plt
import numpy as np

# プロファイルのxとy座標を設定
x_vals = [0.0, 0.2, 0.4, 0.41, 0.6]
y_vals = [1.0, 1.0, 0.6, 0.0, 0.0]  # Solid内部でC_A2=0

x_vals1 = x_vals[:3]
y_vals1 = y_vals[:3]
x_vals2 = x_vals[2:4]
y_vals2 = y_vals[2:4]
x_vals3 = x_vals[3:]
y_vals3 = y_vals[3:]

# グローエフェクト設定
n_lines = 10
diff_linewidth = 1.05
alpha_value = 0.05
neon_blue = '#00f0ff'

# 図と軸のセットアップ
fig, ax = plt.subplots(figsize=(6, 3))
fig.patch.set_facecolor('#0f0f23')  # 背景
ax.set_facecolor('#1a1a2e')         # プロットエリア背景

# グロー部分
for n in range(1, n_lines + 1):
    lw = 2 + (diff_linewidth * n)
    ax.plot(x_vals1, y_vals1, color=neon_blue, linewidth=lw, alpha=alpha_value, zorder=1)
    ax.plot(x_vals2, y_vals2, color=neon_blue, linewidth=lw, alpha=alpha_value, zorder=1)
    ax.plot(x_vals3, y_vals3, color=neon_blue, linewidth=lw, alpha=alpha_value, zorder=1)

# メイン線
ax.plot(x_vals1, y_vals1, color=neon_blue, linewidth=2.5, zorder=2)
ax.plot(x_vals2, y_vals2, color=neon_blue, linewidth=2.5, zorder=2)
ax.plot(x_vals3, y_vals3, color=neon_blue, linewidth=2.5, zorder=2)

# ラベル類
label_color = '#39ff14'
ax.text(0.2, 1.05, r'$C_{A\ell}$', fontsize=12, color=label_color)
ax.text(0.4, 0.62, r'$C_{AS}$', fontsize=12, color=label_color)
ax.text(0.42, 0.02, r'$C_{A2}=0$', fontsize=12, color=label_color)
ax.text(0.05, 1.05, 'Main body\nof liquid', fontsize=10, color='#ff00ff')
ax.text(0.25, 0.9, 'Liquid film', fontsize=10, color='#ff00ff')
ax.text(0.45, 0.9, 'Solid', fontsize=10, color='#ff00ff')

# Δx の矢印とラベル
ax.annotate('', xy=(0.2, 0.1), xytext=(0.4, 0.1),
            arrowprops=dict(arrowstyle='<->', color='#ff4500', linewidth=2))
ax.text(0.3, 0.12, r'$\Delta x$', ha='center', fontsize=12, color='#ff4500')

# 縦線(界面と固体開始点)
ax.axvline(x=0.2, color='#8888ff', linewidth=1, linestyle='--')
ax.axvline(x=0.4, color='#8888ff', linewidth=1, linestyle='--')

# 軸非表示と範囲調整
ax.axis('off')
ax.set_xlim(0, 0.7)
ax.set_ylim(-0.1, 1.2)
plt.tight_layout()
plt.show()

このグラフで考える。縦軸は濃度で、横軸は位置である。

Interfaceの部分では、Fickの法則による拡散が起きている。

\[ r_i = -D\frac{dC}{dx} = -D\frac{C_{AS}-C_{AE}}{\Delta x} = - k_{\text{diff}}(C_{AS}-C_{AE}) \]

次に、固体表面では、化学反応が起きている。定常状態なので、反応速度は等しいから、

\[ r_i = k_{\text{rxn}}C_{AS} \]

これで、見なしの速度定数 \(k\)\(r_i = kC_{AE}\) と定義されるので、

\[ \frac{1}{k} = \frac{1}{k_{\text{rxn}}} + \frac{1}{k_{\text{diff}}} \]

となる。この式ってのは、どちらが律速になるのかというのを判断するのにかなり有効である。

このモデルでは固体内での拡散は考えていない。固体の中での濃度分布というのは、のちに語るThieleモジュールとか、Weisz-Prater基準とか (Section 1.3.9) って話題と関連がある。

触媒反応(Langmuir-Hinshelwood)

触媒(固体)表面上で起こる流体反応には、以下のような一連のステップがあり、最も遅いステップが律速段階(律速ステップ)となる。

  1. 流体バルク中から固体外表面への移動(バルク拡散)
  2. 外表面から細孔内表面までの孔内拡散
  3. 反応物の固体表面への吸着
  4. 固体表面上での化学反応
  5. 生成物の表面からの脱着
  6. 孔内から外表面への拡散(生成物の孔内拡散)
  7. バルクへの生成物輸送(バルク拡散)

Langmuir-Hinshelwood式は3→5の部分をモデル化している。表面被覆率を \(\theta\) とすると、3の部分からして、

\[ r_{\text{ads}} = k_{\text{ads}}(1-\theta)p \]

となる。ここで、\(p\) は反応物の圧力である。これに合わせて、5の部分は

\[ r_{\text{des}} = k_{\text{des}}\theta \]

となる。並行状態なので、

\[ r = r_{\text{ads}} = r_{\text{des}} \]

となる。これを解くと、

\[ \theta = \frac{k_{\text{ads}}p}{k_{\text{des}} + k_{\text{ads}}p} \]

となる。ここで吸着平衡定数 \(K_{\text{ads}} = k_{\text{ads}}/k_{\text{des}}\) を用いると、

\[ \theta = \frac{K_{\text{ads}}p}{1 + K_{\text{ads}}p} \]

となる。以下にグラフ化するが、\(p\) の代わりに濃度も同じことができる。

Show Code
import plotly.graph_objects as go
import numpy as np

# 濃度範囲
C = np.linspace(0, 10, 200)
K_values = [0.5, 1.0, 2.0]
colors = ['orange', 'tomato', 'crimson']

# Langmuir吸着等温線(θ)
fig_theta = go.Figure()
for K, color in zip(K_values, colors):
    theta = (K * C) / (1 + K * C)
    fig_theta.add_trace(go.Scatter(x=C, y=theta, mode='lines',
                                   name=f'K = {K}', line=dict(color=color)))
fig_theta.update_layout(title='Langmuir吸着等温線(被覆率 θ)',
                        xaxis_title='濃度 C',
                        yaxis_title='被覆率 θ',
                        template='plotly_dark')

fig_theta.show()

飽和吸着量を \(q_m\) とすると、

\[ \theta = \frac{q}{q_m} \]

となる。これを代入すると、

\[ \begin{aligned} q &= \frac{K_{\text{ads}}p}{1 + K_{\text{ads}}p}q_m \\ \frac{1}{q} &= \frac{1}{q_m} + \frac{1}{K_{\text{ads}}q_m} \frac{1}{p} \end{aligned} \]

となる。これをLangmuirプロットと呼ばれる。

解離吸着の場合のLangmuir-Hinshelwood式

解離吸着の場合のLangmuir-Hinshelwood式は、次のように導出される。

\[ r_{\text{ads}} = k_{\text{ads}}(1-\theta)^2p \]

となる。空いてる穴が二つ必要だから、2乗されている。ここで、\(p\) は反応物の圧力である。これに合わせて、5の部分は

\[ r_{\text{des}} = k_{\text{des}}\theta^2 \]

となる。これも同様に、塞がっている穴二つ必要だから、2乗されている。並行状態なので、

\[ r = r_{\text{ads}} = r_{\text{des}} \]

となる。これを解くと、

\[ \theta = \frac{\sqrt{k_{\text{ads}}p}}{\sqrt{k_{\text{des}}} + \sqrt{k_{\text{ads}}p}} = \frac{\sqrt{{Kp}}}{\sqrt{Kp} + 1} \]

となる。

\[ \begin{aligned} K &= \frac{k_{\text{ads}}}{k_{\text{des}}} \\ &= \frac{\theta^2}{(1-\theta)^2p} \end{aligned} \]

っていうのが導出の仕方だけど、質量作用の法則を考えれば、

\[ K = \frac{[\ce{AS}]^2}{[\ce{A2}][\ce{S}]^2} \]

となる。ここで、 \([\ce{AS}]\)\(\theta\) に比例して、 \([\ce{S}]\)\(1-\theta\) に比例する。だから、

\[ K = \frac{\theta^2}{(1-\theta)^2p} \]

となるという導き方が簡単だ。……導出過程で色々スキップはしてしまってるので解答では使わないように。

2分子吸着の場合のLangmuir-Hinshelwood式

\[ \begin{aligned} r_{\rm ads,A} &= k_{\rm ads,A}\,(1 - \theta_A - \theta_B)\,p_A,\\ r_{\rm des,A} &= k_{\rm des,A}\,\theta_A,\\ r_{\rm ads,B} &= k_{\rm ads,B}\,(1 - \theta_A - \theta_B)\,p_B,\\ r_{\rm des,B} &= k_{\rm des,B}\,\theta_B. \end{aligned} \]

となる。定常状態なので、

\[ \begin{aligned} r_{\rm ads,A} &= r_{\rm des,A} \\ r_{\rm ads,B} &= r_{\rm des,B} \end{aligned} \]

となる。これを解くと、

\[ \begin{aligned} \theta_A &= \frac{K_A\,p_A}{\,1 + K_A\,p_A + K_B\,p_B\,} \\ \theta_B &= \frac{K_B\,p_B}{\,1 + K_A\,p_A + K_B\,p_B\,} \end{aligned} \]

となる。

これについても、質量作用の法則で

\[ K = \frac{[\ce{AS}]}{[\ce{A}][\ce{S}]} \]

となる。ここで、 \([\ce{AS}]\)\(\theta_A\) に比例して、 \([\ce{A}]\)\([\ce{S}]\)\(1-\theta_A-\theta_B\) に比例する。だから、

\[ K_A = \frac{\theta_A}{(1-\theta_A-\theta_B)p_A} \]

とできるが……。まあ、式の確認に使おう。

吸着エンタルピー

\[ K = \frac{\theta}{(1 - \theta)p} \]

となる。ここで、対数をとって、

\[ \ln K = \ln \theta - \ln (1 - \theta) - \ln p \]

となる。これを \(\theta\) 固定すると、

\[ \pdv{\ln K}{T} + \pdv{\ln p}{T} = 0 \]

となる。ここで \[ K = \exp \qty(\frac{-\Delta G}{RT}) = \exp \qty(-\frac{\Delta H_{\text{ads}}-T\Delta S_{\text{ads}}}{RT}) \]

を代入すると、

\[ \begin{aligned} \ln K &= -\frac{\Delta H_{\text{ads}}}{RT} + \frac{\Delta S_{\text{ads}}}{R} \\ \pdv{\ln K}{T} &= \frac{\Delta H_{\text{ads}}}{RT^2} \\ \pdv{\ln p}{T} &= -\frac{\Delta H_{\text{ads}}}{RT^2} \\ \pdv{\ln p}{(1/T)} &= \frac{\Delta H_{\text{ads}}}{R} \end{aligned} \]

となる。これによって、ある温度において被覆率が一定になるような圧力を実験的に求め、プロットすることによって、吸着エンタルピーを求めることができる。

Wigner-Polanyiの関係式

ここでは表面からの 脱離 について考えている。あと、講義資料と違って、1molあたりのエネルギーで考えているので、 \(k_B\) ではなく、\(R\) を使っている。

とりあえず式としての形は

\[ \begin{aligned} r_{\text{des}} &= - \dv{\theta}{t} = k \theta^n \\ &= \nu_n \theta^n \exp \qty(-\frac{E_n}{RT}) \end{aligned} \]

となる。ここで、\(k\) は速度定数で、\(n\) は反応次数で、\(\nu_n\) は頻度因子である。

これの導出については、とりあえず質量作用の法則に従った形だということは覚えておけばいいのだが、 \(\nu_n\) などについての詳しいことは、TSTなどの話に任せた方が良さそう。はっきり言って、講義内の資料で理解するのは不可能と思われる。

TPDデータ

TPDは、Temperature Programmed Desorptionの略で、温度を変化させることによって、吸着している分子が脱離する過程を観察する手法である。

ここでは、TPDデータによるRedhead法について話す。

温度を一定速度 \(\beta=dT/dt\) で上げるとき、

\[ T(t) = T_0 + \beta\,t \quad\Longrightarrow\quad \frac{d\theta}{dt} = \beta\,\frac{d\theta}{dT} \]

脱離速度 \(r_{\rm des}(T)\) が最大をとる温度 \(T_{\rm max}\)

\[ \frac{d}{dT}\bigl[r_{\rm des}(T)\bigr]_{T=T_{\rm max}} = 0 \]

でもとまる。

$$ \[\begin{aligned} -\beta \dv{\theta}{T} &= \nu \theta \exp\!\Bigl(-\frac{E_{\rm des}}{R\,T}\Bigr) \\ \dv{r_{\rm des}}{T} &= \dv{}{T} \dv{\theta}{t} = \dv{}{T} \beta \dv{\theta}{T} = \beta \dv[2]{\theta}{T} \\ \beta \dv[2]{\theta}{T} &= -\nu \dv{\theta}{T} \exp\!\Bigl(-\frac{E_{\rm des}}{R\,T}\Bigr) - \nu \theta \exp\!\Bigl(-\frac{E_{\rm des}}{R\,T}\Bigr) \frac{E_{\rm des}}{R\,T^2} = 0 \\ 0 &= \dv{\theta}{T} + \frac{E_{\rm des}}{R\,T^2}\theta \\ &=-\frac{\nu}{\beta} \theta \exp\!\Bigl(-\frac{E_{\rm des}}{R\,T}\Bigr) + \frac{E_{\rm des}}{R\,T^2}\theta \\ \frac{E_{\rm des}}{R\,T^2}&= \frac{\nu}{\beta}\exp\!\Bigl(-\frac{E_{\rm des}}{R\,T}\Bigr) \\ \end{aligned}\]

$$

対数を取るとと以下の関係が得られる:

\[ 2\ln T_{\rm max} - \ln \beta = \ln \frac{E_{\rm des}}{R \nu} + \frac{E_{\rm des}}{R\,T_{\rm max}} \tag{★} \]

Thieleモジュール

触媒が多孔質構造を持つとき、反応物は細孔内に拡散してから反応する。この時の触媒内部の反応物濃度を定量的に解析する。

細孔内の濃度について考える。

Show Code
import plotly.graph_objects as go
import numpy as np

# x 軸(相対距離)
x = np.linspace(0, 1, 200)

# スライダーに使う mL 値のリスト
mL_values = np.linspace(0.1, 10, 100)

# 初期値
mL_init = 2
C_init = np.exp(-mL_init * x)
C_avg_init = np.trapezoid(C_init, x)

# フィギュア作成
fig = go.Figure(
    data=[
        go.Scatter(x=x, y=C_init, mode='lines', name='Concentration Profile', line=dict(color='deepskyblue', width=3)),
        go.Scatter(x=[0, 1], y=[C_avg_init, C_avg_init], mode='lines', name='Average', line=dict(color='deepskyblue', dash='dash'))
    ],
    layout=go.Layout(
        title='Concentration Profile in Catalyst Pore (Interactive mL)',
        xaxis_title='x / L',
        yaxis_title='C_A / C_AS',
        template='plotly_white',
        updatemenus=[{
            "type": "buttons",
            "buttons": [
                {"label": "Play", "method": "animate", "args": [None, {"frame": {"duration": 50, "redraw": True}, "fromcurrent": True}]},
                {"label": "Pause", "method": "animate", "args": [[None], {"frame": {"duration": 0, "redraw": False}, "mode": "immediate"}]}
            ]
        }],
        sliders=[{
            "steps": [{
                "args": [[f"{mL:.2f}"], {"frame": {"duration": 0, "redraw": True}, "mode": "immediate"}],
                "label": f"{mL:.2f}",
                "method": "animate"
            } for mL in mL_values],
            "currentvalue": {"prefix": "mL = "},
            "pad": {"t": 50}
        }]
    )
)

# フレームの追加
fig.frames = [
    go.Frame(
        data=[
            go.Scatter(x=x, y=np.exp(-mL * x)),
            go.Scatter(x=[0, 1], y=[np.trapezoid(np.exp(-mL * x), x)] * 2)
        ],
        name=f"{mL:.2f}"
    ) for mL in mL_values
]

fig.show()

ここで、微細な部分 \(\Delta x\) を考える。この部分では、

\[ \dv{N_A}{t}_{\text{in}} - \dv{N_A}{t}_{\text{out}} = \dv{N_A}{t}_{\text{rxn}} \]

となる。ここで、左辺はフィックの拡散、右辺は表面における反応速度で、それぞれを式にして表すと次の通り。ただし単位は、単位長さあたりの変化率であることに注意。

\[ \dv{N_A}{t}_{\text{in}} = -D \pi r^2 \frac{\Delta C_A}{\Delta x} \]

\[ \dv{N_A}{t}_{\text{out}} = -D \pi r^2 \frac{\Delta C_A'}{\Delta x} \]

\[ \dv{N_A}{t}_{\text{rxn}} = - \frac{1}{S} \dv{N_A}{t} \times 2\pi r \Delta x = - k'' C_A \times 2\pi r \Delta x \]

これらを代入すると、

\[ \begin{aligned} - (D \pi r^2 \frac{\Delta C_A}{\Delta x} - D \pi r^2 \frac{\Delta C_A'}{\Delta x} ) &= - k'' C_A \times 2\pi r \Delta x \\ D \dv[2]{C_A}{x} &= k''' C_A \end{aligned} \]

となる。ここで反応速度定数は表面積ベースから体積ベースに変換した。これをこのままだと扱いにくいというか、個別個別で全部やるのが面倒くさいので、無次元化する。

\[ \begin{aligned} C &= \frac{C_A}{C_{AS}} \\ \chi &= \frac{x}{L} \end{aligned} \]

とすると、

\[ \begin{aligned} \dv[2]{C}{\chi} &= L^2\frac{k'''}{D} C = M_T^2 C \end{aligned} \]

となる。ここで、\(M_T\) はThieleモジュールと呼ばれる。

\[ M_T = L \sqrt{\frac{k'''}{D}} \]

この微分方程式を解いて図解したのが上の図。具体的な \(k'''\) の中身については追いかけるのが面倒なので放置するが、その大きさによって律速がどっちなのかがわかる。

\(M_T\) 律速
\(\gg 1\) 拡散律速
\(\ll 1\) 反応律速

次に、先ほどの微分方程式の解は、

\[ C = \frac{\cosh M_T(1 - \chi)}{\cosh M_T} \]

となる。で、この平均というのは

\[ \int_0^1 C \dd{\chi} = \frac{\tanh M_T}{M_T} = \mathscr{E} \]

となって、これを有効性係数と呼んでいる。つまり、これが高ければ高いほど、反応率は高いというわけだ。これを式にまとめると、

\[ -r_A = k''' C_{AS} \mathscr{E} \]

となる。

Show Code
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt

# Thieleモジュールの範囲
M_T = np.linspace(0.1, 100, 300)

# 有効性係数 ε = tanh(M_T)/M_T
epsilon = np.tanh(M_T) / M_T

# プロット
fig, ax = plt.subplots(figsize=(7, 4))
ax.plot(M_T, epsilon, label=r'$\varepsilon = \tanh(M_T)/M_T$', color='cyan')

# 理想直線 ε = 1/M_T(拡散律速時の漸近直線)
ax.plot(M_T, 1 / M_T, '--', color='orange', label=r'$\varepsilon = 1/M_T$ (asymptotic)')

# 軸設定
ax.set_xscale('log')
ax.set_yscale('log')
ax.set_xlabel(r'Thiele modulus $M_T$', fontsize=12)
ax.set_ylabel(r'Effectiveness factor $\varepsilon$', fontsize=12)
ax.set_title('Effectiveness Factor vs Thiele Modulus', fontsize=14)
ax.grid(True, which="both", ls="--", linewidth=0.5)
ax.legend()

plt.tight_layout()
plt.show()

ここで、

\[ M_W = M_T^2 \mathscr{E} = \frac{L^2(-r_A)}{C_{AS} \mathscr{D}} \]

というWeiszモジュールを導入する。これは分母が拡散速度のフィックの法則の式になっていて、分子が反応速度になっている。つまり、この式を見ることによって、拡散律速かどうかの実験チェックができる。

なぜこの式を使うかというと、この式の右辺は実験のみで計測が可能なところ。これによって \(M_T\) の評価なども可能である。

後半戦(今のやつ)

速度分布関数

速度分布関数は以下の通り。

\[ f(v_x) = \qty(\frac{m}{2\pi k_B T})^{1/2} \exp \qty(-\frac{m}{2k_B T} v_x^2) \]

これを用いて、速度の平均値は以下の通り。

\[ \begin{aligned} \bar{v}_x &= \int_0^\infty v_x f(v_x) \dd{v_x} \\ &= \qty(\frac{m}{2\pi k_B T})^{1/2} \int_0^\infty v_x \exp \qty(-\frac{m}{2k_B T} v_x^2) \dd{v_x} \\ &= \qty(\frac{m}{2\pi k_B T})^{1/2} \frac{k_B T}{m} \\ &= \sqrt{\frac{k_B T}{2\pi m}} \end{aligned} \]

これらを3次元に拡張すると、

\[ \begin{aligned} f(v_x, v_y, v_z)\dd{v_x}\dd{v_y}\dd{v_z} &= \qty(\frac{m}{2\pi k_B T})^{3/2} \exp \qty(-\frac{m}{2k_B T} (v_x^2 + v_y^2 + v_z^2)) \dd{v_x}\dd{v_y}\dd{v_z} \\ &= \qty(\frac{m}{2\pi k_B T})^{3/2} \exp \qty(-\frac{m}{2k_B T} v^2) \dd{v_x}\dd{v_y}\dd{v_z} \\ &= \qty(\frac{m}{2\pi k_B T})^{3/2} 4\pi v^2 \exp \qty(-\frac{m}{2k_B T} v^2) \dd{v} \end{aligned} \]

となる。ここで重要なのは、速度分布の変換で

\[ \begin{aligned} \dd{v_x}\dd{v_y}\dd{v_z} &= v^2 \sin \theta \dd{v} \dd{\theta} \dd{\phi} \\ f(v)\dd{v} &= \int_0^{2\pi} \int_0^\pi \int_0^\infty f(v_x, v_y, v_z) v^2 \sin \theta \dd{v} \dd{\theta} \dd{\phi} \\ &= 4\pi v^2 f(v_x, v_y, v_z) \dd{v} \end{aligned} \]

となること。座標変換を挟んでいるので注意。これを用いて、速度の平均値は以下の通り。

\[ \begin{aligned} \bar{v}_x &= \int_0^\infty v f(v) \dd{v} \\ &= \int_0^\infty v \qty(\frac{m}{2\pi k_B T})^{3/2} 4\pi v^2 \exp \qty(-\frac{m}{2k_B T} v^2) \dd{v} \\ &= \qty(\frac{m}{2\pi k_B T})^{3/2} 4\pi \int_0^\infty v^3 \exp \qty(-\frac{m}{2k_B T} v^2) \dd{v} \\ &= \qty(\frac{m}{2\pi k_B T})^{3/2} 4\pi \frac{1}{2} \sqrt{\frac{2k_B T}{m}} \\ &= \sqrt{\frac{8k_B T}{\pi m}} = 4 \bar{v}_x \end{aligned} \]

となる。これは、速度の平均値が \(4\) 倍になっている。3倍になっていないのは、速度分布ってのには大きさだけじゃなく、向きというものも含まれるから。

矢印をランダムに空間内に並べると考えてみて欲しい。

矢印の \(x\) 成分だけ測るなら、向きで半分は捨てるし、投影は短くなる。この“取りこぼし”と“大きさの重みづけ”のサヤ合わせが、“ただ3倍”ではなく“ちょうど4倍”を生んでいる。

逆に、 \(x\) 方向だけ矢印の長さを測るなら、そもそも折り畳まれた状態での測定になるから、元に戻すと \(4\) 倍になる。

Hertz-Knudsen式

ここで、Hertz-Knudsen式を導出する。気体の数密度を \(N\) とすると、

\[ z = \bar{v}_x N \]

ここで、気体方程式を使うと

\[ N = \frac{N_An}{V} = \frac{p}{k_B T} \]

となる。これを代入すると、

\[ z = \bar{v}_x \frac{p}{k_B T} = \frac{p}{\sqrt{2\pi m k_B T}} \]

後半戦

過去問

2012年度

問1

反応速度式の導出方法について、以下の設問に答えよ。

モノシラン(\(\ce{SiH4}\))の気相分解反応は見かけ上、モノシラン濃度に一次の反応である:

\[\ce{SiH4 -> SiH2 + H2}\]

この反応の速度定数を \(k\) とすると、\(k\) は圧力が低くなるとその値が低下することが知られている。
これは、上記の反応が実際には以下のように2段階の素反応に分かれているためと考えられる:

\[\ce{SiH4 + M <=> SiH4^{*} + M}\] \[\ce{SiH4^{*} -> SiH2 + H2}\]

設問

  1. 上記のように、単分子分解反応の速度定数が圧力依存性を示す反応機構を一般的になんと呼ぶか答えよ。
  2. 上記の反応機構に基づき、定常状態近似を用いて、\(\ce{SiH2}\) 生成速度の圧力依存性を示す速度式を導出せよ。
  3. 表面反応速度式として、Langmuir–Hinshelwood 型の速度式がよく知られている。律速段階近似を用いて Langmuir–Hinshelwood 型の速度式を導出せよ。その際に、定常状態近似と律速段階近似の違いを明確にせよ。

先ほど述べた (Section 1.2.4.1) の反応機構。

  1. Lindemann-Hinshelwood機構

  2. 中間体 \(\ce{SiH4^*}\) に対して定常状態近似を適用

\[ k_1[\ce{SiH4}][\ce{M}] = k_{-1}[\ce{SiH4^*}][\ce{M}] + k_2[\ce{SiH4^*}] \]

\[ \Rightarrow \quad [\ce{SiH4^*}] = \dfrac{k_1[\ce{SiH4}]}{k_{-1} + \dfrac{k_2}{[\ce{M}]}} \]

ここで、\([\ce{SH2}]\) の生成速度は \(k_2[\ce{SiH4^*}]\) で表されるので、全体の生成速度は

\[ \dv{[\ce{SiH2}]}{t} = k_2[\ce{SiH4^*}] = \frac{k_1k_2[\ce{SiH4}]}{k_{-1} + \dfrac{k_2}{[\ce{M}]}} \]

ここでみなしの反応速度定数を \(k\) とすると、

\[ \begin{aligned} k[\ce{SiH4}] &= \frac{k_1k_2[\ce{SiH4}]}{k_{-1} + \dfrac{k_2}{[\ce{M}]}} \\ \dfrac{1}{k} &= \dfrac{k_{-1}}{k_1k_2} + \dfrac{k_1}{[\ce{M}]} \end{aligned} \]

になるので、\(\frac{1}{k} \propto \frac{1}{p}\) となる。

  1. 何を書けばいいのかわからない。

2種類の分子が競争的に吸着するのとき、\(A, B\) の吸着に関する平衡は下のようになる。ただし \(\theta\) は吸着率を表す。 \[ K_{\mathrm{A}}=\frac{[\mathrm{M}]_0 \theta_{\mathrm{A}}}{p_{\mathrm{A}}[\mathrm{M}]_0\left(1-\theta_{\mathrm{A}}-\theta_{\mathrm{B}}\right)}, \quad K_{\mathrm{B}}=\frac{[\mathrm{M}]_0 \theta_{\mathrm{B}}}{p_{\mathrm{B}}[\mathrm{M}]_0\left(1-\theta_{\mathrm{A}}-\theta_{\mathrm{B}}\right)} \]

すると、

\[ \frac{d[\mathrm{C}]}{d t}=k \theta_{\mathrm{A}} \theta_{\mathrm{B}}=k \frac{\left(p_{\mathrm{A}} K_{\mathrm{A}}\right)\left(p_{\mathrm{B}} K_{\mathrm{B}}\right)}{\left(1+p_{\mathrm{A}} K_{\mathrm{A}}+p_{\mathrm{B}} K_{\mathrm{B}}\right)^2} \]

問2

炭素粒子の燃焼反応に関連して、以下の設問に答えよ。

設問

  1. 直径 \(1\ \mathrm{cm}\) の炭素粒子を \(800\ ^\circ \mathrm{C}\)\(1\ \mathrm{気圧}\) に保持した電気炉(雰囲気は空気)に入れたところ、燃焼し始めた。この温度での炭素表面に入射する酸素分子の反応確率(\(\ce{C + O2 -> CO2}\) の反応が起こる確率)は \(5.0 \times 10^{-2}\) であるという。この温度における表面反応速度定数を求めよ。ただし、空気中の酸素の濃度は \(21\%\)、酸素分子の分子量は \(32\)、気体定数 \(R = 8.314\ \mathrm{J/mol \cdot K}\)\(1\ \mathrm{気圧} = 1.0 \times 10^5\ \mathrm{Pa}\) である。

  2. 上記の反応は表面反応律速となるか、それとも拡散律速となるか、判断せよ。なお、\(800\ ^\circ \mathrm{C}\) における酸素の拡散係数を \(2.0 \times 10^{-5}\ \mathrm{m^2/sec}\) とする。

  3. 2の条件において、二酸化炭素の発生速度を計算せよ。なお、燃焼による炭素粒子径の減少は考えずに、初期生成速度(炭素粒子の直径 \(1\ \mathrm{cm}\) のときの速度)を計算すればよい。

  4. 電気炉内に酸素を供給し、電気炉内の酸素濃度を \(21\%\) から \(30\%\) に増大させた。このとき、上記の二酸化炭素発生速度はどのように変化するか答えよ。

  5. 電気炉内に空気を供給し、炭素粒子の周りに流れを発生させた。このとき、流れによって炭素粒子およびその周りの空気の温度に変化はないものとする。二酸化炭素発生速度が流れの速度によってどのように変化するか記述せよ。

This is an example of a callout with a title.

This is an example of a callout with a title.

模擬試験

[1] 反応機構の推測

以下の反応が観測されている:

\[ \ce{A + B -> AB}, \quad r_{AB} = k[\mathrm{B}]^2 \]

このとき、反応機構として考えられるステップ反応を提案し、その妥当性を説明せよ。

また、次のような反応式の場合についても考えよ。

\[ \begin{aligned} &\ce { 2A + B -> A2B} \\ &r = \frac{K_1[\ce{A}]^2[\ce{B}]}{1+K_2[\ce{A}]} \end{aligned} \]

確か講義内で言ってたはず。とりあえず大事で大事で大事なのは、中間体に定常状態仮定を当てはめること。

まず最初の式の場合は、

\[ \begin{aligned} \ce{B + B -> B2} \quad &r_1 = k_1[\ce{B}]^2 \\ \ce{2A + B2 -> 2AB} \quad &r_3 = k_3[\ce{A}]^2[\ce{B2}] \\ \end{aligned} \]

となる。で、ここからの導き方なのだけど、2つ通り方法があって、まずはlaw of mass actionを使う方法。

\[ \begin{aligned} K &= \frac{[\ce{B2}]}{[\ce{B}]^2} \\ r_{\mathrm{total}} &= k_2[\ce{A}]^2[\ce{B2}] \\ &= Kk_1[\ce{B}]^2[\ce{A}]^2 \end{aligned} \]

ここで、 \([\ce{A}]\) が充分量存在するとすると、定数となって導かれる。

次に、定常状態仮定を使う方法。多分こっちの方を聞きたがってそう。

\[ \begin{aligned} \dv{[\ce{B2}]}{t} &= k_1[\ce{B}]^2 -k_2[\ce{B2}] - k_3[\ce{A}]^2[\ce{B2}] + k_4[\ce{AB}]^2 = 0\\ [\ce{B2}] &= \frac{k_1[\ce{B}]^2 + k_4[\ce{AB}]^2}{k_2 + k_3[\ce{A}]^2} \\ r_{\mathrm{total}} &= k_2[\ce{A}]^2[\ce{B2}] \\ &= \frac{k_1k_2[\ce{A}]^2[\ce{B}]^2 + k_1k_4[\ce{A}]^2[\ce{AB}]^2}{k_2 + k_3[\ce{A}]^2} \end{aligned} \]

ここで \(k_4=0\) を仮定、つまり下の反応が可逆ではないとすれば一応は形はあって、さらに \(k_2 = 0\) を仮定すれば、さらに良い形で式が出る。

次に二つ目の問題は講義でも出たもの。Michaelis–Mentenモデルだ。中間体に定常状態仮定を当てはめることを考える。

\[ \begin{aligned} \ce{A + B -> AB} \quad &r_1 = k_1[\ce{A}][\ce{B}] \\ \ce{A + AB -> A2B} \quad &r_3 = k_3[\ce{A}][\ce{AB}] \\ \end{aligned} \]

これから、

\[ \begin{aligned} \dv{[\ce{AB}]}{t} &= k_1[\ce{A}][\ce{B}] - k_2[\ce{A}][\ce{AB}] - k_3[\ce{A}][\ce{AB}] + k_4[\ce{A2B}] = 0\\ [\ce{AB}] &= \frac{k_1[\ce{A}][\ce{B}] + k_4[\ce{A2B}]}{k_2 + k_3[\ce{A}]} \\ r_{\mathrm{total}} &= k_3[\ce{A}][\ce{AB}] - k_4[\ce{A2B}] \\ &= \frac{k_1k_3[\ce{A}]^2[\ce{B}] + k_2k_4[\ce{A2B}]}{k_2 + k_3[\ce{A}]} \end{aligned} \]

ここで \(k_4=0\) を仮定、つまり下の反応が可逆ではないとすれば考える式と同じになる。

[2] 重合反応に関する問題

(1) 重合速度の導出

モノマー M と開始剤 S から重合体 P が生成する開環重合反応において、初期段階での重合速度式を導出せよ。

(2) 鎖長と濃度の関係

熱力学的鎖長の逆数が \([S]/[M]\) に比例することを示せ。ただし、[S] は連鎖移動剤濃度、[M] はモノマー濃度とする。

(3) 計算問題

ラジカル重合において、モノマー濃度 \([\mathrm{M}] = 1.0\ \mathrm{mol/L}\) に固定し、 開始剤とは別に連鎖移動剤 S を加えて重合を行ったところ、以下のような結果が得られた。

\([\mathrm{S}] \ \mathrm{M}\) \(\nu\)
0.002 100
0.004 100/3

このとき、連鎖移動定数 \(C_{tr}\) を求めよ。また、 \([\ce{S}] = 0.006\ \mathrm{M}\) のときの \(\nu\) を求めよ。

式を導き出す際に必要な知識は次のとおり。

  • 開始反応、連鎖開始、連鎖成長、連鎖停止、連鎖移動反応
  • ポリマーの生成速度は、 \(\ce{P+R^.->P^.}\) の反応速度に等しい
  1. は、まあ学生が作れる程度の問題だとこんなもの。

\[ \begin {aligned} \ce{I &->[k_d] 2R^{.}}\\ \ce{R^{.} + M &->[k_i] M^{.}}\\ \ce{M^{.} + M &->[k_p] M^{.}}\\ \ce{2M^{.} &->[k_t] P}\\ \ce{M^{.} + S &->[k_{tr}] P + S^{.}} \end{aligned} \]

重要なのは、 \(\ce{M}\) はモノマーではあるが、2式以降の \(\ce{M^{.}}\) はラジカルで、ただのモノマーじゃない。

まず、ラジカルに定常状態仮定を当てはめると、

\[ \begin{aligned} \dv{[\ce{R^.}]}{t} &= 2fk_d[\ce{I}] - k_i[\ce{R^.}][\ce{M}] = 0 \\ \dv{[\ce{M^.}]}{t} &= k_i[\ce{R^.}][\ce{M}] - k_t[\ce{M^.}]^2 = 0 \\ [\ce{R^.}] &= \frac{2fk_d[\ce{I}]}{k_i[\ce{M}]} \\ [\ce{M^.}] &= \sqrt{\frac{k_i}{k_t}[\ce{R^.}][\ce{M}]} \\ &= \sqrt{\frac{2fk_d}{k_t} [\ce{I}]} \\ \end{aligned} \]

次に、連鎖成長速度はモノマー減少速度の \(\ce{M+R^.->M^.}\) の反応速度に等しいので、

\[ \begin{aligned} r &= k_p [\ce{M^.}][\ce{M}] \\ &= k_p \sqrt{\frac{2fk_d}{k_t} [\ce{I}]} \ce{[M]} \\ \end{aligned} \]

動力学的な鎖の長さは、鎖に使われたモノマーの数/ポリマーの数で考えられるので、

\[ \begin{aligned} \nu &= \frac{\text{単位時間に消えたモノマー分子}}{\text{単位時間に生成されたポリマー分子}} \\ &= \frac{R_p}{R_{tr}+R_t}\\ \frac{1}{\nu} &= \frac{R_t}{R_p} + \frac{R_{tr}}{R_p} \\ &= \frac{k_t[\ce{M^{.}}]}{k_p[\ce{M^{.}}][\ce{M}]} + \frac{k_{tr}[\ce{M^{.}}][\ce{S}]}{k_p[\ce{M^{.}}][\ce{M}]} \\ &= \frac{k_t}{k_p} + \frac{k_{tr}[\ce{S}]}{k_p[\ce{M}]} \\ &= \frac{1}{\nu_0} + C_{tr}\frac{[\ce{S}]}{[\ce{M}]} \end{aligned} \]

ここで、\(C_tr\) は連鎖移動定数と呼ばれる。

代入すれば、 \(C_{tr} = 2.5, \nu = 50\) となる。

[3] 平衡反応と速度定数

以下の平衡反応を考える:

  • \(\ce{A -> R}\)(反応速度定数 \(k_1\)
  • \(\ce{A -> S}\)(反応速度定数 \(k_2\)

これらの反応における正味の生成速度と平衡時の濃度関係を示す図を描き \(k_1, k_2\) の求め方を確かめよ。

\(\ce{A}\) の量についての微分方程式は次のとおり。

\[ \begin{aligned} \dv{[\ce{A}]}{t} &= - (k_1 + k_2)[\ce{A}] \\ [\ce{A}] &= [\ce{A}]_0 \exp\qty{-(k_1 + k_2)t} \end{aligned} \]

ここで、 \(\ce{R}\) の生成量は、

\[ \begin{aligned} \dv{[\ce{R}]}{t} &= k_1[\ce{A}] \\ [\ce{R}] &= \int_0^t k_1[\ce{A}]_0 \exp\qty{-(k_1 + k_2)t} \dd t \\ &= \frac{k_1[\ce{A}]_0}{k_1 + k_2} \qty{1 - \exp\qty{-(k_1 + k_2)t}} \end{aligned} \]

\(\ce{S}\) の生成量も同様にして、

\[ [\ce{S}] = \frac{k_2[\ce{A}]_0}{k_1 + k_2} \qty{1 - \exp\qty{-(k_1 + k_2)t}} \]

これらは以下のようにグラフにできて、

Show Code
import numpy as np
import pandas as pd
import matplotlib.pyplot as plt

# 初期濃度と速度定数
A0 = 1.0  # mol/L
k1 = 0.1  # s^-1
k2 = 0.05  # s^-1
k_total = k1 + k2

# 時間範囲
t = np.linspace(0, 100, 500)

# 濃度の時間変化
A_t = A0 * np.exp(-k_total * t)
R_t = (k1 / k_total) * A0 * (1 - np.exp(-k_total * t))
S_t = (k2 / k_total) * A0 * (1 - np.exp(-k_total * t))

# グラフの描画
plt.figure(figsize=(10, 6))
plt.plot(t, A_t, label='[A] (mol/L)')
plt.plot(t, R_t, label='[R] (mol/L)')
plt.plot(t, S_t, label='[S] (mol/L)')
plt.xlabel('Time (s)')
plt.ylabel('Concentration (mol/L)')
plt.title('R, S Density')
plt.legend()
plt.grid(True)
plt.tight_layout()
plt.show()

\[ \begin{aligned} [\ce{R}]_\infty &= \frac{k_1[\ce{A}]_0}{k_1 + k_2} \\ [\ce{S}]_\infty &= \frac{k_2[\ce{A}]_0}{k_1 + k_2} \\ \frac{k_1}{k_2} &= \frac{[\ce{R}]_\infty}{[\ce{S}]_\infty} \end{aligned} \]

この比がグラフから読み取れる。また、 \([\ce{A}]\) の傾きから \(k_1+k_2\) がわかる。

[4] 固体表面との反応速度

以下の反応を考える:

\[ \ce{A(l) + B(s) -> S} \]

このとき、A の消失速度 \(r(\mathrm{A})\) を以下の変数を用いて表せ:

  • \(k_l\):液-固間の物質移動速度定数
  • \(k''\):表面反応速度定数
  • \(C_A\):液中のAの濃度

拡散段階では、

\[ r_\mathrm{diff} = k_l ([\ce{A}] - [\ce{A}]_s) \]

ここで、 \([\ce{A}]_s\) は表面の濃度である。

表面反応段階では、

\[ r_\mathrm{surf} = k'' [\ce{A}]_s \]

これに対して、 \(r_\mathrm{diff} = r_\mathrm{surf}\) となる定常状態仮定をする。

\[ \begin{aligned} [\ce{A}]_s &= \frac{k_l [\ce{A}]}{k_l + k''} \\ r_\mathrm{total} &= \frac{k_l k'' [\ce{A}]}{k_l + k''} \]

[5] 拡散と触媒粒子サイズの関係

拡散律速を避けるためには、触媒粒子の最大半径 \(L\) に関して、以下の式が成り立つ。

\[ \frac{L \sqrt{k}}{\sqrt{D}} < 0.4 \]

この条件の物理的意味を述べ、速度律速段階の変化について説明せよ。

Section 1.3.9 で詳しく書いてあるのだが、正直講義資料では何も言われていないので……

計算すれば、 \(40 \mu \mathrm{m}\) 以下で反応律速になる。

[6] 拡散速度と吸収の比較

また、吸収が物理的プロセスのみである場合と、吸収後に化学反応を伴う場合で、拡散速度にどのような違いが出るかを論じなさい。

化学反応を伴う場合、吸収後の反応により濃度勾配が大きくなり、それによって拡散速度が促進される。

後半戦確認テスト

1回目

問1

面心立方格子をもつ Pt の格子定数 \(a = 0.4\ \mathrm{nm}\) としたとき、
\((100)\) 面の 1 cm⁻² あたりに含まれる Pt 原子の個数を求めよ。

単位格子表面には、手前の1/4が4つ、真ん中の1があるとして、合計2個の原子があるとする。

\[ N_s = \frac{2}{a^2} = 1.25 \times 10^{19} \mathrm{m^{-2}} \]

これを1 cm²について考えると、

\[ N_s = \frac{2}{a^2} \times 10^{-15} \mathrm{m^2} \]

問2

Hertz–Knudsen の式から、数秒以内に全ての Pt 原子に分子が吸着することを示せ。

以下の条件を用いること:
- 圧力 \(p = 1.33\times10^{-4}\ \mathrm{Pa}\)
- 分子質量 \(m = 28\)\(N_2\) または CO)
- 温度 \(T = 300\ \mathrm{K}\)
- ボルツマン定数 \(k_B = 1.38\times10^{-23}\ \mathrm{J\,K^{-1}}\)

Hertz-Knudsen式は、Section 1.4.2 で述べた通り。

\[ z = \frac{p}{\sqrt{2\pi m k_B T}} \]

\[ z = 3.8 \times 10^{14} \mathrm{cm^{-2}s^{-1}} \]

なので、

\[ r = \frac{N_s}{z} = 3.3 \mathrm{s} \]

となる。

2回目

問1

2種類の分子が表面吸着する場合の吸着等温式を導け。

\[ \begin{aligned} k_a^A(1 -\theta_A - \theta_B)[\ce{A}] &= k_d^A \theta_A \\ k_a^B(1 -\theta_A - \theta_B)[\ce{B}] &= k_d^B \theta_B \\ K^A[\ce{A}] \triangleq \frac{k_a^A}{k_d^A} &= \frac{\theta_A}{1 -\theta_A - \theta_B} \\ K^B[\ce{B}] \triangleq \frac{k_a^B}{k_d^B} &= \frac{\theta_B}{1 -\theta_A - \theta_B} \\ \frac{K^A[\ce{A}]}{K^B[\ce{B}]} &= \frac{\theta_A}{\theta_B} \\ \theta_A &= \frac{K^A[\ce{A}]}{1 + K^A[\ce{A}] + K^B[\ce{B}]} \\ \theta_B &= \frac{K^B[\ce{B}]}{1 + K^A[\ce{A}] + K^B[\ce{B}]} \\ \end{aligned} \]

ここで、 \(\theta_A, \theta_B\) はそれぞれA, Bの表面被覆率である。

Show Code
import numpy as np
import plotly.graph_objs as go

# K^A[A] の範囲(x軸)
x = np.linspace(0, 20, 500)

# 吸着率 θ_A の定義
theta_A_case1 = x / (x + 2)    # K^B[B] = 1
theta_A_case2 = x / (x + 11)   # K^B[B] = 10

# グラフ描画
fig = go.Figure()

fig.add_trace(go.Scatter(
    x=x, y=theta_A_case1,
    mode='lines',
    name='K^B[B] = 1'
))

fig.add_trace(go.Scatter(
    x=x, y=theta_A_case2,
    mode='lines',
    name='K^B[B] = 10'
))

fig.update_layout(
    title='θ_A と K^A[A] の関係(競合吸着)',
    xaxis_title='K^A [A]',
    yaxis_title='θ_A',
    legend_title='条件',
    yaxis=dict(range=[0, 1]),
    font=dict(family="Arial", size=16)  # 日本語化はブラウザ依存
)

fig.show()

3回目

問1

0次反応では昇温とともに脱離量が指数関数的に増加し、あるところで突然0となる。この振る舞いをする理由を Wigner-Polanyi の関係式を用いて説明せよ。

Wigner-Polanyiの関係式は、Section 1.3.7 で述べた通り。

\[ \begin{aligned} r_{\text{des}} &= - \dv{\theta}{t} = k \theta^n \\ &= \nu_n \theta^n \exp \qty(-\frac{E_n}{RT}) \end{aligned} \]

0次反応では、\(n=0\) となる。このとき、

\[ r_{\text{des}} = -\dv{\theta}{t} = \nu_0 \exp \qty(-\frac{E_0}{RT}) \]

となる。ここで昇温処理をしているので、

\[ \dv{\theta}{t} = \beta \dv{\theta}{T} \]

となる。これを代入すると、

\[ -\beta \dv{\theta}{T} = \nu_0 \exp \qty(-\frac{E_0}{RT}) \]

となる。これを積分すると、

\[ \theta_0 - \theta(T) = \frac{\nu_0}{\beta} \int_{T_0}^{T_1} \exp \qty(-\frac{E_0}{RT}) \dd{T} \]

となる。これは、昇温とともに指数関数的に脱離が増えることを示しているが、 \(\theta(T) = 0\) となるところで、被覆物質がなくなり、つまり脱離が止まることを示している。

問2

一次反応では、昇温と共に脱離量が山形のピークを形成する。 このように振舞う理由を Wigner–Polanyi 型速度式の \(\theta\)\(\exp\bigl(-E/(k_B T)\bigr)\) の温度依存性から説明せよ。

Section 1.3.8 で述べた通り。

0次については吸着が有限のため、離脱料がある程度以上増えると離脱が止まる。

1次については、一度指数関数的に増加するも、次第に小さくなる。

4回目

問1

ある種の反応では温度上昇に伴って反応の速度が低下することが観測される。この理由について見かけの活性化エネルギーに着目してエネルギーダイアグラムを使って説明せよ。

見かけ上の活性化エネルギーが負になり、温度が上がるにつれて反応速度が遅くなる。

問2

Roginsky-Zeldovich 型吸着等温式は以下の様に書かれる:

吸着: \[ v_a = k_a p_a \exp(-\alpha \theta) \]

脱離: \[ v_d = k_d \exp(\beta \theta) \]

ここで \(\alpha\), \(\beta\) は定数である。
吸着と脱離が平衡のときの被覆率 \(\theta\) を求めよ。

イコールで結ぶだけで、

\[ \theta = \frac{1}{\alpha + \beta}\ln K p_a \]

5回目

眠気のため、答えだけ。

\(\ce{CO}\) 酸化反応では、\(\ce{O2}\) の解離吸着が律速段階となることが多く、\(\ce{O2}\) の表面供給が重要である。\(\ce{CO}/\ce{O2}\) 比が大きくなると、\(\ce{CO}\) が表面を占有して \(\ce{O2}\) の吸着・解離が妨げられる。その結果、\(\ce{CO2}\) 生成反応が進行するにはより高温が必要となり、反応の活性温度が高温側にシフトする。

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