問いの正体は、調べたい系をどのような外界の中へ置くかを選ぶことです。
非常に多数の粒子を含む物体の微視状態を一つずつ追跡することはできません。そこで、同じ巨視的条件を満たす仮想的な系を多数集めたアンサンブルを考えます。三つのアンサンブルの違いは、外界と交換できるものによって決まります。
| ミクロカノニカル |
外界から孤立 |
\(E,V,N\) |
なし |
| カノニカル |
熱浴と接触 |
\(T,V,N\) |
\(E\) |
| グランドカノニカル |
熱浴・粒子浴と接触 |
\(T,V,\mu\) |
\(E,N\) |
ここで、\(E\) は全エネルギー、\(V\) は体積、\(N\) は粒子数、\(T\) は温度、\(\mu\) は化学ポテンシャルです。
ミクロカノニカル分布では、許されたエネルギー殻の中にある微視状態はすべて同様に確からしいとします。これが等重率の原理です。許された微視状態数を \(W(E)\) とすれば、各状態の確率は \(1/W(E)\) です。
カノニカル分布では、系は熱浴とエネルギーを交換します。系がエネルギー \(\varepsilon_l\) を取ると熱浴のエネルギーが同じだけ減るため、系の状態には
\[
\exp(-\beta\varepsilon_l),
\qquad
\beta=\frac{1}{k_{\mathrm B}T}
\]
という重みが付きます。この重みを全状態について足したものが分配関数
\[
Z=\sum_l\exp(-\beta\varepsilon_l)
\]
であり、\(Z\) で割ることで確率の総和を1にします。
グランドカノニカル分布では、エネルギーだけでなく粒子も交換できます。粒子数 \(N\) の状態に対しては、熱浴とのエネルギー交換に加えて \(\mu N\) の寄与を考えるため、重みは
\[
\exp[-\beta(\varepsilon_{l,N}-\mu N)]
\]
となります。その規格化定数が大分配関数 \(\Xi\) です。
三つは別々の法則ではありません。十分に大きな系では同じ巨視的結果を与えますが、固定したい変数に合うアンサンブルを選ぶと計算が簡単になります。